第5章

高齢者への芸術を支援する個人・団体

アメリカ国内の様々な人々、施設、団体が高齢者へ の芸術の振興に取り組んでいる。こうした取り組みに携わっているのは国、州、地方自治体の組織から小規模の非営利組織や個人までと幅が広い。関係者は日に 日に増え続けている。以下に挙げるのは、その中から私たちが選んで調査したものにすぎない。選択にあたっては、過去の実績や現在の取り組み状況だけでな く、webページが充実していて情報を得やすく調査研究が行いやすいことを考慮して決めた。

アメリカは社会福祉国家ではないので、多くの非政府の非営利組織(NPO)が高齢者への芸術振興を進めている。予算の確保はいつも大きな問題である。安定した予算がついた例外的な事業もあ るが、多くの事業は秀逸さについてはひけはとらないものの、少額の予算での運営を余儀なくされている。私達の訪れたヨーロッパ諸国では、芸術・文化振興の 事業には国や地方自治体から資金援助があるのが普通だった。高齢者への芸術・文化のプログラムは、年齢にかかわらず生活に欠かせないものとして受けとめら れているようである。アメリカではヘルスケア分野における最大最良の芸術振興助成団体である国立芸術基金(NEA)からの援助が大きな意味を持つ。

アメリカの国立団体

国立芸術基金(National Endowment for the Arts)

会長:ダナ・ジオイア

アクセサビリティ・パートナーシップ事務局

局長:ポーラ・テリー

1100 Pennsylvania Avenue, NW

Washington DC 20506

Tel: 202-682-5532(V)

Fax: 202-682-5613 (Fax)

URL: http://www.arts.endow.gov/partner/Accesibility/Brochure.html

国立芸術基金(NEA)は他の国立の団体や非営利・営利団体、公的・私的機関と連携して芸術家や芸術団体を援助し、国民が芸術に親しむ 機会を増やすことを目標にしている。高齢者への芸術振興に取り組む諸団体の情報も提供する。またこの方面の種々のプロジェクトの資金を管理する。高齢者の 芸術プログラムの援助にも関心が高い。パートナーシップ(連携制)のもと、アクセサビリティ事務局では公的・私的セクターとの連携の輪を広げている。高齢 者への芸術プログラムの支援に高い関心を示す。(NEAプロジェクトとパートナーシップについてはwebサイト参照: http://arts.endow.gov/partner/index.html)たとえば、高齢者用に考えられたプログラムには次のようなものがある。

NEAは、ニューヨーク州ブルックリンの、現在は高齢者芸術協会(ESTA)として生まれ変わろうとしているアメリカ高齢者芸術プログラム(APIOA)のデータベース作りを支援してきた。このデータベースには、ネットワーク作りに役立つ連絡先を含め、国内の様々な芸術プログラムの情報が幅広く収められている。(創造的な加齢センターNCCAのwebサイト参照: http://www.creativeaging.org)

NEAの「ヘルスケアの芸術」パートナーシップは、「ヘルスケアの場の芸術」協会(SAH)が率先してヘルスケア施設に専門的な芸術プログラムを確立することを支援する。(SAHのwebサイト参照:  http://www.societyartshealthcare.org/

NEAではデザイナーの育成、ユニバーサルデザイン(ほとんどの人が生涯にわたって役立てることのできる品物や環境のデザイン)に関する学校への支援を、率先して行っている。こうした中で、ノースカロライナ州ラレイのユニバーサルデザインセンターによる2001年度のユニバーサルデザインの32例を集めたCDロムが生まれた。( http://www.design.ncsu.edu/cud/) また2001年にはNEA主催で生涯デザイン学会を開き、住宅改修を手がけている人達を対象にユニバーサルデザインの教育に貢献した。

具体的に言うと、2002年度のパートナーシップ協定では、63件に総額39,645,800ドルのパートナーシップ助成金を出した。また2003年度のリーダーシップ・イニィシアティブ助成金には、ワシントンDCのジョージワシントン大学のジーン・コーエン加齢研究センターへの145,000ドルも含まれる。ここでは高齢者への芸術の効果を調べる3年計画の研究の3年目に入っていて、高齢者の生活の質に及ぼす専門的な芸術プログラムの効果についての研究が成されている。(詳細はwebサイト参照  http://www.arts.gov/learn/03Grants/Leadership.html)

NEA からのニュース  (2003年7月1日)

NEAは、ヘルスケアの現場へのさらなる芸術の関与を促すために、先ごろ広範囲に渡る報告書を発表した。下に挙げるのは、それを報じた記事からの引用である。

NEA会長ダナ・ジオイアによると、芸術には私たちの生活を高め、辛いときに慰めを与えてくれる計り知れない力がある。私たちは芸術を現実のアメリカ人の人生、つまり病院、ホスピス、そして最後には死へと導かれる人生の旅路と、改めて結びつけてみなくてはならない。

NEAの二部構成の報告書には、ヘルスケアの場の芸術プログラムを強化し、地域の医療サービスの一環になるまで拡大して いかなくてはならないとある。ヘルスケアの場の芸術の効果をもっと良く理解し、調査をしてその価値をもっと良く把握し、それを公表し、国の予算基盤を強化 してヘルスケアの現場や事務の職員を育成する必要があるとも述べられている。

NEAとヘルスケア芸術協会主催の最近のシンポジウムには、医療、芸術、福祉、報道の各分野からと事業者や政府の担当者など合わせて40名が出席して、ヘルスケアの場の文化プログラムの振興法について話し合った。討議はヘルスケアの場の最近の芸術プログラムの情況を示した調書を基に行われた。その結果編み出された実施計画が、将来のプログラムの発展につながることだろう。

報告の全文は、NEAのwebサイトで読むことができる。実施計画、プロジェク ト例、ヘルスケアの場の芸術の調査研究、シンポジウムの概念、シンポジウム報告、シンポジウム参加者の6項目から成っている。プロジェクト例の項では、健 康増進センターから病院、そしてホスピスまでヘルスケア施設に芸術を導入している24例を詳しく紹介する。ヘルスケアの場の芸術調査研究の項には、指導例とヘルスケアの場での芸術の効果を示す大小37グループの調査例を載せる。調査対象の芸術は音楽にグラフィックアート、ヘルスケアの芸術、ダンスと幅広い。実施計画の項には教育、市場開拓、研究と発展、資金について語られている。それぞれ種々の項目の目的と方法について、慎重に考慮されている。

非営利組織

ヘルスケアの芸術協会 (Society for the Arts in Healthcare)

1632 U Street NW

Washington, D.C.2009

Tel: 202-299-9770

Fax: 202-299-9887

URL: http://www.societyartshealthcare.org/

ワシントンDCにあるヘルスケアの場の芸術協会(SAH)は1990年に創設され、ヘルスケアの大切な要素としての芸術の振興に努めている。

その方法は:

● 癒し効果を高める芸術の大切な役割を示す。

● ヘルスケア施設の計画や運営に芸術を組み込むことを提唱する。

● 専門家の視点から、ヘルスケア対象者への芸術プログラムを改善、運営するのを助ける。

● ヘルスケアや芸術の分野の人材育成教育を提供。

● ヘルスケア環境での芸術の効果の調査研究を進め支援する。

SAHがスポンサーになり、ヘルスケアの場の芸術振興のための新しい研究やプロジェクト、プログラムについて討議する国や地方の会議を開きネットワークを作り、機関誌や月刊のオンラインニュースを会員に送っている。SAHのwebサイトは、役に立つ情報の供給源としてますます充実していっている。NEA、ジョンソン&ジョンソン、その他と連携して、会員に補助金を出したり相談に乗ったりしている。

1990年の創設以来、SAHは会員数も会議への出席回数も劇的に伸ばしてきた。2003年度には、37の州、6つの郡から500人以上の個人会員と65のヘルスケアセンターを誇り、医師、看護師、医学生、ヘルスケア施設職員、建築家、デザイナー、アートセラピスト、画家などそれぞれ専門の仕事をする人々が幅広く集まっている。(上記は、ヘルスケアの場の芸術協会の2003年度会議用パンフレットを基にした。)最も印象深いのは、こうした多様な人々の集団がヘルスケアの場に様々な分野の芸術を導入することにいかに熱意を注いでいるかである。SAHを参考に設立された日本の「芸術とヘルスケア協会」( http://www.popo.or.jp/art-care/ )が、SAHの年次総会で紹介されたのは、3年前のシアトル大会が最初だった。二つの協会はここ2年余り「ケア供給者のケア」という共同プロジェクトを進めている。この共同事業への取り組みの詳細は、両協会のニュースレターで読むことができる。下記はSAHのホームページからの引用である。

「ケア供給者のケア」:日本グローバル・パートナーシップ・センター財団の支援を受け、SAHと「たんぽぽの家」、及び日本の「芸術とヘルスケア協会」が共同で進めている国際プロジェクトで、日米両国の病院、施設、家庭におけるケア供給者のケアについての調査、研究を行っている。

初回イベントとしては、フロリダ州ゲインズビルでのSAH年次総会において先行会議を開催(2002年4月17日)。この会議は日・英2カ国語で開き、同時通訳 をおいた。第2回イベントは、日本各地のヘルスケアの場の芸術を視察する2週間の旅で、アメリカでヘルスケアの場への芸術導入にあたる専門家が参加した。 会議での発表内容やその反応、日米両国の視察訪問の詳細は本にまとめられ,2003年夏に刊行予定である。(註:日本語版は2003年5月に刊行された。)

アメリカ退職者協会(AARP)

American Association of Retired Persons (AARP)

601 E. Street NW

Washington, DC 20049

Tel: 1-800-424-3410

http://www.aarp.org/

ホームページに明記されているように、AARPは50歳以上の人々の需要や関心に答えることを目的とした非営利組織である。情報供給、教育、サービスを通してすべての人々の自立と尊厳、生き甲斐を高め、生活の質を向上させることを目的としている。また、会員への情報提供のために「 The AARP Bulletin」「AARP The Magazine」(旧題Modern Maturity)始め、いくつかの雑誌や機関誌も刊行している。詳細はAARPのwebページを参照。 http://www.aarp.org/leadership/Articles/a2002-12-18-aarpfactsheet.html .

1985年に設立されたAARPには、今日では50歳以上の会員が3,500万人以上もいる。約半数の会員はフルタイムかパートで就業していて、残りの半数は退職者だ。協会の目的は高齢者の 生活の質の向上である。健全な加齢とは、地域社会の活動に積極的に参加し貢献していくことである。自立を保つのは必須だ。高齢者には選択肢があることを確 約し、ふさわしい環境を整えて自立生活を支援し、健康、安全、法律、経済の講座を設け、高齢者の悩みを代弁して行政に呼びかける。このようにAARPの活動は芸術にのみ焦点を当てているわけではないが、芸術や文化、デザインへの支援はAARPの多くのプログラムの一部を成している。

AARP のwebサイトには、高齢者や加齢について研究する上で役に立つ項目が数多く含まれている。

AARP研究センター

ここで支援している研究には、次のようなものがある。

リンク1:AgeSource WorldwideTM

http://research.aarp.org/general/agesource_home.html

AgeSource Worldwide は 幅広い分野での情報を提供する。情報センター、データベース、図書館、番号案内、統計データ、参考文献、図書リスト、テキスト、加齢及び関連事項に焦点を 当てたメタサイトを載せる。取り扱う内容は、アルツハイマー病から住宅のデザインまでと幅が広い。また日本を含む世界20カ国の情報を網羅している。

リンク2:AgeLine Homepage

http://research.aarp.org/ageline/home.html

加齢に関する図書や記事のデータベース。記事は300以上の雑誌や紀要からスキャンして掲載。

リンク3:Living Issue Research

http://research.aarp.org/il/index.html

住宅(ケアハウスも含む)の選択肢と家屋改修についての情報。

リンク4:Universal Design: A Home for All Ages

http://www.aarp.org/universalhome

8歳から80歳まで万人の需要に応えられる住宅のユニバーサルデザインについて。

さらに2003年春には、加齢についての情報を掲載した新しいサイトを立ち上げる予定である。

地域別 非営利組織(NPO)

メリーランド、ワシントン、ヴァージニア エリア

Arts for the Aging (AFTA)

会長/創始者:Loo Sarnoff

プログラム主任:Janine C. Tursini

4905 Del Ray Avenue, Suite 305

Bethesda, MD 20814

Tel: 301/718-4990

Fax: 301/718-4992

Email: artsafta@aol.com

Web page: www.aftaarts.org

ルー・サーノフの設立したAFTAは、1988年からワシントンDCとメリーランド、及びヴァージニアの高齢者デイケアセンターやNPO運 営の老人ホーム、病院等で、心身障害のある高齢者に芸術面のサービスを提供している。こうしたデイケアセンターや他の施設の高齢者たちと身近に接しなが ら、幅広く様々な芸術活動への参加を奨励する。高齢者の多くに、アルツハイマーを含む軽度から中度の痴呆の症状が見られる。AFTAの多様なプログラムは、高齢者の生活に色彩、形、音楽、動きを導入する。それにより患者に楽しみを与え、健康状態を改善することができる。

AFTAのプログラムはますます充実してきている。アートセラピスト、ダンサー、画家、音楽家、写真家、陶芸家など様々な分野の芸術家がこうしたプログラムに参加している。AFTA の成功は偶然によるものではない。芸術家たちは、高齢者への取り組み方についてきめ細かい研修を受ける。これが、AFTAの芸術プログラムの成功の鍵を握っている。また、施設側がこうしたプログラムの導入を要請し、その効果を調べるこ とを条件にしているのも成功の一要因といえる。プログラムは無料で提供されるが、施設側にはプログラムを支援する態勢づくりが求められる。さらに、定期的 に反省会を開くことになっている。最近の統計では、メリーランド、ワシントン、ヴァージニアの50以上の高齢者センターがAFTAプログラムに参加している。毎年1万人余りの高齢者や子供たちが、AFTAプログラムの恩恵にあずかっている。

下に挙げるのは、AFTAのwebページからの引用である。これを読むと、芸術が高齢者の生活をいかに変えることができるかがよく分かる。

AFTAの芸術プログラムにはダンス、素描、ドラム、音楽、絵画、詩作、彫刻、文化鑑賞、芸術の講義、世代間交流型プログ ラムがある。プログラムの効果の一部を挙げてみると、粘土を扱うことで手の関節の動きを維持することができ、ひいては高齢者が人手を借りずに食事や着替え をする能力の維持に役立つ。体操やダンスはバランス能力を養い、転倒事故の防止に役立つ。音楽活動は脳を刺激したり落ち着かせたりする働きがあり、またそ の音楽が流行っていた頃にまつわる個人的あるいは時代的な記憶を呼び覚ますのに役立つ。高齢者は積極的に楽しかった日々を回想して、健康的に思い出を楽し むことができるようになる。視覚芸術は認知能力を高め、目と手の連携を増す。子供をプログラムに参加させることで、自己評価を高め、世代間交流にも役立て ることができる。医学研究者たちも、芸術活動が高齢者の健康維持に役立つことを認めている。

( http://www.aftaarts.org/over.htm )

プログラム責任者やAFTAの職員は、AFTAの芸術クラスの途中と後の高齢者の機敏さ、言語能 力、社交性、不安の緩和、落ち着き、神経の動揺、短期間記憶への刺激について観察する。センター職員の多くが、こうした効果は芸術クラスの後、数時間から 人によっては数日間も続くと述べている。参加した高齢者の生活の質は、それだけ高まったと言えよう。

非営利組織として、AFTAは地域社会の支援で運営されている。AFTAの無料プログラムはメリーランド州政府、財団、団体組織、そして個人の協力に支えられている。常に資金の調達に努めている。詳しくはAFTAのwebサイトを参照。

http://www.aftaarts.org/index.htm

ニューヨーク市 エリア

「高齢者と分かち合う芸術」

Elders Share the Arts (ESTA)

Executive Director: Susan Pearlstein

138 South Oxford Street

Brooklyn, NY 11217

Tel: 718-398-3870

Email: superl@aol.com

Web site: www.aftaarts.org

1979年創設のESTAは、この20年間、民族や年齢、健康状態の違いを超え、芸術プログラムを通じて住民の連帯感を強める活動を行っている。初めはブロンクス地区だけだったのが、1984年には市全体に組織を広げ、今では全米でプログラムを展開している。

研修を積んだ専門の芸術家たちが、世代間交流を深めるために老若混じってプログラムに取り組む。社会問題、世代間のずれ、隣人史、個人史—こうしたものをもとに、ESTAの 芸術スタッフが手を貸し、劇、物語、詩、絵画を生み出していく。こうした「生きている歴史劇フェスティバル」のようなプロジェクトは、地域社会を活気づか せ世代間交流を促進するのに役立つ。「譲り伝える芸術」プログラムは、高齢者に、家族や友人に代々伝えていくものを持たせることができる。「知恵の珠」プ ログラムは、高齢者の知恵が間違いなく若い人に受け継がれていくようにするもので、ESTAのトレーニング・プログラムも注目を集め出している。「人生を振り返るトレーニング・マニュアル」(The Life Review Training Manual )とトレーニングのビデオ「高齢者の声」(Elder Voices)と「地域の世代間交流芸術」(Generating-Intergenerational Arts)の3点はその好例である。

全プログラムのリストは以下のようである。

1.地域おこし

2.生きている歴史の芸術

3.悩み解決の劇

4.譲り伝える芸術

5.知恵の珠

6.発見

7.生きている財産

生きている歴史の芸術

2000年6月7日にクーパーユニオンで開かれた「生きている歴史フェスティバル」は、ESTA主催のプログラムの一例である。これは二部構成になっていて、午前中は世代間交流プロジェクトについてのシンポジウム、午後は「生きている歴史」劇の公演である。ESTAの役員スーザン・パールスタインを初めとするシンポジウムの参加者は、世代間交流プログラムに関してそれぞれの体 験談を語った。「生きている歴史」劇の公演では、立見席の近隣住民や近くの老人ホームからの高齢者、地元の高校生達の前で、高齢者と若者や人種間の誤解を をテーマにした劇が上演された。

国立「創造的な加齢」センター

National Center for Creative Aging (NCCA)

http://www.creativeaging.org/who.html

1998年、ESTAは「創造的な加齢センター」(NCCA) を設立した。芸術の専門家、教育者、社会福祉分野の職員に、歴史の口述筆記の技法で個人の回想を文章、絵、劇にしていく方法を教える国立の訓練センターで ある。老いても創造的でありたいという高齢者の願いに応じるのが、センターの目的である。こうした願いの裏には、自己成長、生涯教育、体験の伝承、地域社 会とのつながりといった思いが含まれている。( http://www.halsell.net/projects/ESTA/main.html

2001年には、ESTA創造的な加齢センター(CCA)は、NCCAとして「創造的な加齢」の分野でネットワークづくりや訓練、広報を促進する正式な国立の機関となった。1998年にESTAが「生きている歴史」の方法を全国に広めようとしておこしたセンターは、創造的な加齢の分野を確立するための組織へと進展したのである。

NCCAの役割(NCCAのホームページより)

NCCAは、高齢者の創造性あふれる表現力と生活の質との深い関わりを社会に広く理解させることを目標としている。文化、民族、経済状態、年齢、心身機能や認知力の程度の違いにかかわらず、すべての高齢者にとり創造的表現は大切である。

創造的な加齢の分野を促進するためのNCCAの計画は、次のようである。情報センターとして情報提供、高齢者の芸術プログラムの評価、芸術プログラムの促進、高齢者の芸術の記録、訓練と教育、人材の活用。

Hospital Audiences, Inc. (HAI)

 Founded by: Michael Jon Spencer

548 Broadway, 3rd Fl

New York, NY 10012

Tel: 212-575-7676

Fax: 212-575-7669

hai@hospaud.org

http://www.hospaud.org/hai/index.htm

HAIは、ニューヨークで孤立している人々に芸術に親しむ機会を与えようと、マイケル・ジョン・スペンサーが1969年に設立したNPOである。WebサイトはHAIの様々なプログラムについての情報で充実している。野外展覧会の様子もネット上で公開され、2002年夏の号の機関誌もダウンロードできる。下はwebページからの引用である。

HAIのサービスを受ける人の中には心身障害者、知的発育障害者、寝たきり、車椅子使用者、視聴覚障害者、ホームレス、身体機能障害のある高齢者、心身に問題のある若者、アルコール・薬物依存症患者、エイズ感染者、更正施設入居者が含まれる。創設以来、309,200件余りの文化イベントを通じて,1,000万人以上の聴衆の心に訴えてきたことになる。2003年夏号の機関誌には、こうした数字の増加に伴い内容の充実度も増してきたことが記されている。HAIの活動は市や州の機関、財団、会社、個人に支えられている。

HAIの目標は希望とインスピレーションをもたらすこと。そのための方法は:

*芸術へのアクセス

文化の潮流から取り残された人々を文化機関に紹介し、視聴覚芸術や演劇を体験させたり、芸術を直接、住居である施設に導入したりする。

*芸術を通して

エイズ、HIV感染、結核を含む深刻な健康問題、暴力の予防、保護所や病院、精神病施設の入居者のホームレス問題、エイズ患者、HIV感染者など特殊な人々の住宅問題、学校、薬物依存症治療プログラム、その他に関して有益な情報を提供し、賢く対処できるように芸術を通して導く。

下記の本も、HAIの出版物のwebページからダウンロードすることができる。

マイケル・ジョン・スペンサー著:

『生の芸術体験:健康と福祉への効果』

Live Arts Experiences: Their Impact on Health and Wellness   3rd Edition

New York: Hospital Audiences, Inc., Edition  June 2000

これは芸術と癒し、健康の問題に興味を持つ人には必読の書である。生の芸術を扱うHAIの仕事への支援についても触れてある。

シアトル ピュージェット湾 エリア

Senior Making Art (SMA)

 Dale Chihuly の始めたNPO

325 118th Avenue S. E. Suite 210

Bellevue, WA 98005

Tel: 206-453-2494

Fax: 206-453-2927

Url: www.seniorsmakingart.org/

「芸術を通して創造的な表現力を養うための機会を提供し、高齢者の生活の質を高める」

SMAは、世界的に有名なガラス工芸家のデイル・チフリーが、NPOとして1991年に設立した。彼は高齢者が社会に貢献できるものを豊かに備えているのに、貢献する手だてがほとんどないことに気がついた。高齢者の創造力を表現する場はどこにもなかった。こうしてSMAが生まれた。デイル・チフリーは、SMAについて次のように述べている。

「これは高齢者が余生に何か意味があることができ るように作ったプログラムである。想像力と人生経験があれば、誰でも芸術を生むことができる。芸術は単なる技巧ではなく、感情や思い出と深く関わってい る。高齢者には感情も思い出も豊かに備わっている。技術やアイデアを発展させるには時間がかかる。多くの高齢者には、芸術を生むのに必要な素材がある。私 たちのプログラムでは、こうした人達に創作に取りかかる自信を与える。また、創作に取りかかりやすいように、基本的な技術を教え、足りない材料を揃えて、 高齢者に喜びと生き甲斐を与えたいと願う専門の芸術家達とも契約を結んでいる。感情や記憶、人生経験をどのように表現すればよいか例を示して、高齢者を勇 気づける。高齢者は、社会のどの年齢層の人々より知識と経験があるわけだから、方法さえ教えれば誰でも芸術を生み出すことができる。」

プログラムはピュージェット湾エリア一帯で行われている。たとえば2000年には、SMAは200以上のプログラムを用意した。どれも8週間のプログラムで、それを美術館、退職者コミュニティ、高齢者センター、図書館、病院、学校、老人ホームなど130か所で行った。55人の芸術家が素描、絵画、コラージュ、彫刻、ガラスのモザイク絵、写真など様々な分野の芸術指導にあたった。受講費も材料費も無料である。受講者はほとんど高齢者だったが、世代間交流プログラムでは若い人の参加をも受け入れた。詳細はSMAのwebページを参照。 www.seniorsmakingart.org/

その他のエリアで高齢者の芸術に取り組んでいるNPO の小リスト

高齢者の芸術導入に取り組んでいるその他の注目すべきNPOの中には、ダンス、音楽、劇など舞台上演活動も加えているところがある。他にもまだ、いろいろな活動をしているところが見つかるはずだ。

Mill Street Loft

NPOで、ニューヨーク州プーキプシー市に本部を置く総合芸術教育センター。

http://www.millstreetloft.org/

Liz Lerman Dance Exchange

世代や、主義、生活様式の違いを超えて人々を結びつける動く芸術と芸術運動のための教育センター。

http://www.danceexchange.org/

Grass Roots Art and Community Effort (GRACE)

1975年設立のヴァーモント州にあるNPO。主にヴァーモント州郡部在住の独学で芸術を学んだ高齢者によって生み出された芸術を掘り起こし、伸ばしていくのが目的。Webページには、こうした芸術家達の作品例が数多く出ている。

http://www.graceart.org/index2.php

Full Circle Theatre

世代間交流センターThe Center for Intergenerational Learning (CIL)のプロジェクト。1984年に、年齢に関する問題を即興劇で訴えようとする10代の人達と高齢者の小さな団体として発足。劇を通して社会問題を改善していこうとする活動は、地域社会に大きく貢献している。

http://www.temple.edu/cil/Fullcirclehome.htm

大学のプログラム

今日の高齢化社会における芸術の役割についての大 学プログラムに、関心が高まりつつある。そうしたプログラムの筆頭は、アートセラピーだろう。第二は、ヘルスケアの場における芸術の役割に関するプログラ ム。第三に、高齢者の健康やケアに対する環境やデザインの効果についてのプログラムが注目される。大学主催の生涯教育プログラムには、必ずと言っていいほ ど美術史と文学、美術、音楽、それに頻度は下がるが劇やダンスが加わる。老人医学や老年学を含む高齢者対象のプログラムにおいて、芸術への関心がますます 高まりだしている。

芸術と加齢に関する大学のプログラムの多様さについては、各プログラムのwebページに詳しい。

*ジョージ・ワシントン大学 George Washington University

アートセラピー・プログラム

http://www.gwu.edu/~artx/index.html

*フロリダ大学 University of Florida, Gainsville

美術学部

「ヘルスケアの場の芸術」研究センター

http://www.arts.ufl.edu/cahre

フロリダ大学付属シャンズ病院

医療の場の芸術

https://shands.org/hospitals/UF/AIM/

*ジョージ・ワシントン大学医学センター

「加齢と健康と人文学」センター

http://www.gwumc.edu/cahh/index.htm

*ベイラー大学医学部

ハフィントン加齢センター

http://www.bcm.tmc.edu/hcoa/beta/

*テンプル大学

世代交流学習センター

http://www.temple.edu/cil/

*ウィスコンシン大学 ミルウォーキー校

建築・都市設計学部

加齢と環境センター

http://www.uwm.edu/Dept/IAE

*ハーヴァード大学

継続教育学部

ハーヴァード退職者学習センター

http://www.hilr.harvard.edu/default.jsp

*ノースカロライナ大学 アッシュビル校

ノースカロライナ「創造的な老後」センター

http://rocky.unca.edu/ncccr/

高齢者のための大学

http://rocky.unca.edu/ncccr/CFS/


『老人施設の「生活の質」と芸術の役割』