『老人施設の「生活の質」と芸術の役割』
平成15年3月(2003)

第8章 芸術と加齢のリサーチ及び文献概説

芸術と加齢のリサーチ

この数年、学会に出席してヘルスケアの場の芸術に 携わっている人達と親しく話す機会がある。一方で、ヘルスケアの場への芸術導入の効果を立証する研究を早急にもっと行う必要があるという意見も、絶えず耳 にする。医療スタッフ、ケアワーカー、施設経営者、資金提供者等、どの人も、限られた予算をただの時間つぶしでどうでもいいように思える活動に使うことの 意義をはっきり証明して欲しいと思っているようだ。ヘルスケアの場への芸術導入の効果を立証するには、医学リサーチで慣習になっている科学的証明の量産が 不可欠と見ているらしい。しかし、芸術プログラムに実際に携わっている人達には、このような「証明」は必要ない。芸術プログラムに参加した患者にどれほど 素晴らしい効果が現れたかを、自分たちの目で見たり、患者の家族から直接聞いたりして知っているのである。筆者は、予算の心配をする必要がない特殊なプロ グラムもいくつか見てきている。家族に大きな効果があった芸術プログラムの素晴らしさを老人ホームや病院、ホスピス等に入居している他の人達にも是非体験 してもらいたいと願う有志が、資金を出し合って支えているプログラムがあるのだ。ところで、その「効果」とはなんだろう。こうしたさまざまなプログラムに 参加すると、前より積極的になり、薬の摂取量が減り良く笑うようになって、自信も生まれてくることが多いのだ。つまり生活の質が高まるのである。

ヘルスケアにおける生活の質とは、各人にとって身 体的、精神的、社会的に必要なことが満たされるように気遣ってもらえる情況にいるかどうかということである。全人的な配慮が、ヘルスケアの目的である。こ うした生活の質への配慮は、ヘルスケア分野の教育と実習の両面をおさえた人文科学の導入に通じる。つまり、還元主義や二元主義を唱える生物医学や科学とは また別の視点からものごとを見ようとしているのだ。人文科学――美術、文学、音楽、哲学、歴史――の対象は、この社会に住む男女である。このような芸術プ ログラムを評価するには、プログラムを包括する人文科学が反映されていなくてはならない。社会の外枠だけ計測して出た数値を偏重するのではなく、私達の感 じているもの、つまり中身にも注意が向けられるべきだ[1] 。この社会に住む男性、女性それぞれの、社会との関わり方をいろいろな局面から捉えるのが人文科学的な見方である。

人間の全局面に対する全人的な配慮とは、身体と精 神を別々のものとみなしてはならないということである。しかし、ヘルスケアへの全人的アプローチは、精神と身体の非二次元的なとらえ方よりも遙かに多くの 意味がある。患者の家族や社会のネットワーク、ケア提供者、自然及び人工の環境のことまで考慮に入れたアプローチである。人の福祉は、このように密接につ ながり合ったすべてのものと深く関わっているのである。また感覚、感情、気持ち、気分といったものにも充分注意する必要がある。楽しく感じるとき、身体の 調子も良いことが多い。笑いは「百薬の長」として受け止められている[2]。芸術がヘルスケアに役に立つのも、まさにこうした点なのである。

芸術は、視覚芸術であれ演劇や文学であれ、私達の 心の核に届き、内奥に潜んでいた自己を呼び出してくれる。芸術にはまぎれもなく、私達を刺激し、心に訴え、癒してくれる力がある。これほど強力な影響を与 えることができるのは、おそらく芸術の語る話、芸術に内在する話のせいだろう。人間は生来、話すことで互いに理解し合うものだ。話は、意味をつかむため の、理解するための試みなのである[3] 。ヘルスケアにおける芸術の価値を考えるとき、私達は量的な評価だけに絞るべきではない。たしかにこれまでヘルス ケアの益のために量的なリサーチが行われてきたし、今も引き続き行われている。しかしこの量的アプローチには、注意を要する。なぜなら私達の関心は生活の 質、つまり患者がおかれた環境をどう感じているかということだからである。これは数値だけでは表せないものだ。私達は社会を計測しているのではない。理解 しようと努めているのである。量ではなく質的なアプローチで、つまり言葉が中心的役割を果たすアプローチで判断したい。話が語られなくては、そして聴かれ なくてはならない。言葉で表現し、その意味を掘り下げることが必要だ。医学では、臨床の場でかつて「語り」が重要視されていた。現代の医療は図表やデータ に頼りがちで、医師達は患者の話に耳を傾けなくなってきた。症例の研究を言葉で書き表す習慣は、もはや「失われた芸術」となりつつある。最近になってこう した問題が認識され始め、「語り」をめぐる論議が医学誌に現れ始めた。慢性病治療に関して、患者達の話に以前より関心が払われ出している。患者の話への関 心は、昔から洋の東西を問わず医療やヘルスケアの場で中心的な役割を果たしてきた全人的アプローチに深く関わっている。伝統的な西洋医学に全人医療の考え を再び取り入れる動きが出始めたのは、いわゆる代替医療への関心が高まってきているためだろう。

リサーチの問題に戻ると、ヘルスケアの場への芸術 導入の効果を科学的リサーチで裏付けることは重要視されるだろうし、この数年間こうしたリサーチがますます進んでいるようだ。しかし、この問題について筆 者がジーン・コーエンと話した折、コーエン氏はこう言った。芸術プログラムの効果を証明するものが必要だといまだに言っている人は、すでに出されているい ろいろなリサーチの文献を読んでいないのだと。ジーン・コーエンの著書『なぜあの人はかくも元気なのか?――新しい生き方を見つける10の扉』には、人々の健やかな加齢と創造的でいることの効果に焦点を当てて、こうしたリサーチのいくつかが紹介されている [4] 。ヘルスケアの場の芸術導入の効果を証明する既刊のリサーチ文献を、もっと容易に活用できるようにする必要がある。今、このことが実現しつつある。たとえば2003年7月1日付「NEA」は、ヘルスケアの場の芸術に関心を促す記事を掲載している。この特集記事には「ヘルスケアの場の芸術リサーチ」という項目があり、大小人数のグループを対象とした質の高い多様なリサーチを、27例紹介する [5]

記事には長期に渡る研究は少ないと断ってあるが、スウェーデンのウメア大学のラース・オロフ教授のチームの研究をここに紹介したい。10,000人以上を対象に14年間もかけてなされたものである。この研究では、 映画やコンサート、美術館、展覧会に出かけるなどして定期的に芸術に接している人は、そうでない人に比べかなり長命傾向にあるという結果が出た。驚くべき ことに、年齢、性別、慢性病の有無、喫煙、肥満、教育程度にかかわらず、結果は同じであった。ただし、著者は、このことから直ちに結論を引き出すことには 慎重な姿勢を取っている[6]

ヘルスケアの場の芸術導入の効果を証明するものと して、別の方法のものも加速的に増え続けている。この分野で働く人々が参加しているさまざまなプロジェクトの報告書である。裏付けの乏しいものだと軽視す る人もいるが、数々の成功しているプロジェクトの重みは、高齢者の生活改善へのこの新しいアプローチに世間の関心を徐々に集め出している。こうしたプロ ジェクトの報告書は、種々の芸術プログラムに参加した人達にどんな変化が表れたかを紹介しているものが多い。実際に携わっている個々人の話は、継続して予 算をとる根拠として、もっと真剣に受け止められてよいのではないだろうか。「語り」による分析をもっと掘り下げて行い、芸術プログラムや生活の質の評価に 最も適した質の高いリサーチにおいて役に立っているかどうかを見きわめる必要がある。(語りについては無敵剛介教授の東洋医学における語りの重要性につい ての論文参照。)

しかしこの分野の関係者も部外者も、ヘルスケアの 場で芸術の果たす役割についてはっきり分かっていない人が多い。彼ら自身、育ってきた過程で、芸術に触れ合う機会がなかったことがその一因であろう。その 上、芸術は、医科大学やケアワーカーのカリキュラムでこれまで扱われていなかった。最近の報道や新聞記事を見ると、この点も変わり始めているようだ。アメ リカの医学校やスウェーデンの看護プログラム、日本のソーシャルワークやケアワークで、芸術がカリキュラムの一部として取り入れられつつある。一方で、活 動プログラムと称して高齢者の時間つぶしを目的としたものには、明らかに芸術が欠けている。アメリカや、ヨーロッパ、日本のヘルスケアの場で見られるさま ざまな芸術活動においては、真の芸術を積極的に奨励している。言うまでもなく本論文の目的は、ひとつにはそのようなプログラムを実施するための方策を探る ことである。

上述のことから、ヘルスケアにおける芸術の効果を 裏付けるリサーチは重要であること、そのようなリサーチを広く社会に伝えることはさらに大切であること、また一般教育においても医療福祉教育においても もっと徹底した芸術カリキュラム改革が必要であることが分かる。ヘルスケアにおける芸術、文化の役割に関して、基本的なことが他にもある。ヘルスケアの場 における芸術や文化の必要性に、そもそもなぜ疑問の声が挙がるのかということに関わってくる。日本でもアメリカでも芸術をヘルスケアの場に導入するために は、大変な努力で奮闘しなくてはならない。幼稚園や保育園の壁はいつでも子供達の生き生きした楽しい絵で飾られている。これまで見てきたようにホスピスで も、芸術が重要な役割を果たしている。幼稚園からホスピスに至るまでの間は、どうして芸術が日常生活の一部になれないのだろう。スカンジナビアや他のヨー ロッパ諸国では、ヘルスケアの場に芸術や文化を取り入れるのは何も特別なことではなく、ごく当たり前に行われているような印象を受ける。年齢に関わりな く、芸術が生活の一部になり続けるのが常識になっている。教育における芸術の位置づけによるのかもしれないが、お互いを人格ある人間として認め合う、こう した国々の社会民主主義的な見方がそうさせているのだろう。ある意味で、アメリカよりも日本の方がこうした国々に近いように思われる。つまり、日本にはヘ ルスケアの場で芸術がもっともっと大きな役割を果たす可能性が十分あるのだ。

文献概説

シンポジウム及び学会報告書;リサーチプログラム

Hospital Audiences, Inc. (HAI)
http://www.hospaud.org/hai/index.htm  (2011年4月17日アクセス)
(Michael Jon Spencer, Founder and Executive Director)

Live Arts Experiences: Their Impact on Health and Wellness
『生の芸術体験:健康と福祉への効果』第3版 2000年6月刊
オンライン版(PDFフォーマット) URL:http://www.getcited.org/puba/100295112

HAIの25周年記念シンポジウム「芸術の力で希望とインスピレーションを:癒しと福祉の展望」(1994)に基づく論文。
生の芸術体験の力について論じ、電子・コンピュータテクノロジーを介しての媒体文化を探り、結びに健康、福祉、生の芸術体験の項目をおく.
9ページからなる参考文献一覧を付記。

アラン・ディラーニ編集
『デザインと健康:デザインの癒し効果』
(2000年、第2回「デザインと健康」国際学会)

Alan Dilani (editor), Design and Health: The Therapeutic Benefits of Design
Stockholm: Svnsk Byggtjanst, 2001
ヨーロッパ、アメリカ、アジアの専門家達によるヘルスケア施設のデザインとヘルスケアの芸術へのアプローチについての35の研究をまとめたもの。

フランセスカ・ターナー及びピーター・シニア編集
『文化、健康、芸術シンポジウム――論文選集』
(2000年マンチェスター、マンチェスター・メトロポリタン大学)

Francesca Turner and Peter Senior (editors), Culture, Health, and the Arts Sumposium—An Anthology
副題「福祉の強力な推進力」。「文化、健康と芸術」に関する国際シンポジウムでの33の論文を集めたもの。世界各国(日本を含む)からの参加者が芸術と健康についてあらゆる視点から論じている。

*全国芸術基金 National Endowment for the Arts (NEA)
「ヘルスケアにおける芸術にもっと参加を呼びかける」
2003年7月1日発行NEA 報告書

『アメリカのヘルスケア芸術運動概要』
The Arts in Healthcare Movement in the United States: Concept Paper
『ヘルスケア芸術シンポジウム、2003年3月19-20日、於ワシントンDC』
The Arts in Healthcare Symposium, March 19-20, 2003. Washington DC
NEA及びヘルスケア芸術協会主催の最近のシンポジウムに、医療、芸術、福祉、報道、企業、官公庁各方面の専門家40名が参加して、ヘルスケアの場の文化プログラム振興のための優れた案を出し合った。
PDF REPORT ON THE ARTS IN HEALTHCARE SYMPOSIUM オンラインURL:www.nasaa-arts.org/Learning-Services/Past.../B-Health-SymposSumm.pdf

付録A:「ヘルスケア芸術プログラムの例」では、視覚芸術、文学、演劇を導入しているアメリカのヘルスケア施設の中から27例を紹介。
付録C:「ヘルスケア芸術リサーチ」では規模や分野も様々なヘルスケア芸術の質の高いリサーチ37例を紹介。

[PDF] REPORT ON THE ARTS IN HEALTHCARE SYMPOSIUM - [ このページを訳す ] ファイルタイプ: PDF/Adobe Acrobat - クイック ビュー Symposium Participants. March 19-20, 2003. Rea Blakey. Televsion/Medical Journalist. Silver Spring, MD. Amy Brannock. Facilitator. Durham, NC. Suzy Brenner. Executive Director. Society for the Arts in Healthcare. Washington, DC ... www.nasaa-arts.org/Learning-Services/Past.../B-Health-SymposSumm.pdf

NEA報告書には、主要リサーチ一覧の冒頭に次のような記載がある。
「様々な分野のヘルスケア芸術では、単独に行われているものもあるが、同一テーマについて基本リサーチにさらに付け加えるような長期の追跡リサーチをしている例は多くないようだ。」

バイグレン教授による以下のリサーチはNEAの報告書には紹介されていないが、「長期の追跡リサーチ」を代表するものである。

ラルス・オロフ・バイグレン、ボインクム・ベンソン・コンラン、スベンエリック・ヨハンソン:
「文化イベントへの参加、読書、演奏、合唱でいつまでも生き生きと:スウェーデンの暮らしのアンケート調査」

Bygren, Lars Olov; Konlaan, Boinkum Benson; Johansson, Sven-Erik,
“Attendance at cultural Events, reading books or periodicals, and making music or singing in a choir as determinants for survival: Swedish interview survey of living conditions,” British Medical Journal (BMJ),1996(21-28December)Vol. 313, pp. 1577-80.

スベンエリック・ヨハンソン、ボインクム・ベンソン・コンラン、ラルス・オロフ・バイグレン:
「文化イベント参加の習慣で健康維持:長期研究」

Sven Erik Johansson, Boinkum Benson Konlaan, and Lars Olov Bygren,
“Sustaining habits of attending cultural events and maintenance of health: a longitudinal study,”
Health Promotion International (Oxford University Press 2001)
http://heapro.oupjournals.org/cgi/content/full/16/3/229 (2001年11月15日アクセス)

ボインクム・ベンソン・コンラン、ラルス・オロフ・バイグレン、スベンエリック・ヨハンソン:
「映画、コンサート、美術館、展覧会に行って健やかに。スウェーデンの14年間に渡る追跡調査」

Boinkum Benson Konlaan, Lars Olov Bygren, and Sven Erik Johansson,
“Visiting the cinema, concerts, museums or art exhibitions as determinant of survival: a Swedish fourteen-year cohort follow-up”
Scandinavian Journal of Public Health (2000), 28, pp.174-178

B・B・コンラン、N・ビョールビ、L・O・バイグレン、G・ヴェイスグラス、L・G・カールソン、M・ウィドマルク:
「文化イベント参加と運動と健康:無作為管理アンケート調査」

BB Konlaan, N Bjorby, LO Bygren, G. Weissglas, LG Karlsson and M Widmark,
“Attendance at cultural events and physical exercise and health: a randomized controlled study,”
Public Health (2000), 114, pp. 316-319

ジョン・アンガス
『健康のための芸術プロジェクト評価の方法に関して』

John Angus(Pioneer Projects Celebratory Arts Limited)
An Enquiry concerning Possible Methods for Evaluating Arts for Health Projects
この79ページの報告書は、最初イギリスのCommunity Healthから発行された(1999)が、CAHHM(ダーラム大学、健康と医療における芸術及び人文学センター)から再発行。
URL:http://www.dur.ac.uk/cahhm/New-CAHHM-Publication.htm

地域社会を規準とした芸術の評価の基礎研究で、芸術家の視点から論じられている。評価の主要目的は1)効果を知らせる(結果)、2)方法の効率を査定(過程)。

CAHHM(ダーラム大学、健康と医療における芸術及び人文学センター)
The Center for Arts and Humanities in Health and Medicine (CAHHM)
http://www.dur.ac.uk/cahhm/

CAHHMはダーラム大学に新設されたリサーチユニットで、ヘルスケアへの芸術の効果を立証し、医学生や福祉関係者の研修で 人文学教育をもっと充実させることに尽力している。リサーチを主体として、ヘルスケアの場の芸術プログラムを調査、指導し、芸術、医療福祉、教育の各部門 が協力して行うプログラムの評価法の確立に努める。特に、地域社会に根ざしたヘルスケア芸術及びヘルスケア施設の建築やデザインが人に与える効果に関心が 高い。

CAHHM
14/15 Old Elvet, Durham, DH1 3HP.
Great Britain

Tel: 0191-334-6231
Email: cahhm.info`durham.ac.uk

『病院の芸術、文化としてのケア:リサーチプログラム』
Arts in Hospital and Care as Culture Research Program
(Kultur I varden och varden som kultur) 1994~1998; also 2001-2005
ストックホルム州議会

ストックホルム・ランス美術館(ストックホルム州立美術館)、リサーチ主任、ブリギッタ・ラップ
Birgitta Rapp. Research Director, Stockholms Lans Museum (Stockholm County Museum)
Forskningsprogrammet Research Programs 1994-1998 (allocation: SEK 10 million)
URL:  http://www.lansmuseum.a.se/prog/omgamla.html  (スウェーデン語)

「病院の芸術、文化としてのケア:リサーチプログラム 1994-1998」は英文の論文で、当プログラムについての解説と27のリサーチプロジェクトの概要を掲載し、 また1996年10月の出版物、論文一覧も掲げる。

Forskningsprogrammet Research Progurams 2001-2005
URL:  http://www.lansmuseum.a.se/prog/projekte.html (英文)

このホームページでは、ストックホルム州議会主催のプログラムの一環として資金提供を受けて進行中の21のリサーチプロジェクトの概要を簡潔に紹介。

ストックホルム州議会が「病院の芸術と文化としてのケアリサーチプログラム」を支援しているのは、ヘルスケアにお ける芸術や文化の役割の重要性が認識されていることの表れである。議員が直接、 研究者達との会合に出席するのも、プログラムをしっかり理解していることを 裏付けるものだ。議員149名のうち半数は女性であることも特記に値する。アメリカ、日本等の国々もこのモデルプログラムに関心を寄せている。

ビルギッタ・ラップの「病院の芸術と文化ケア」も参照。
Birgitta Rapp, “Arts in Hospital & Care as Culture”

In Francesca Turner and Peter Senior, editors,
Culture, Health and the Arts Symposium—An Anthology (Manchester: The Manchester Metropolitan University, 2000, pp. 23-25)

エクセター評価:エクセター・ヘルスケア芸術の評価リサーチプロジェクト
リサーチと報告 ピーター・シニア、ピーター・シャー

The Exeter Evaluation: Evaluation Research Project of Exeter Health Care Arts
Research and Report by Peter Senior and Peter Scher
Bawmoor House Royal Devon and Exeter Hospital
オンラインURL: http://www.ehca.org.uk/report.htm  (2003年4月9日アクセス)

病院芸術の主要プログラムの最初の単独評価として、この報告書には病院での患者と家族の相互交流活動に関する重要 なデータと新しい見解が示されている。病院の所蔵する芸術作品が院内に展示してあるというのが、この研究の前提となる。目録を作成し、特定の芸術作品に対 するユーザー(患者、職員、訪問者)の反応のアンケート調査を行う。癒し効果やセラピー上の効果について調べる。こうしたプロジェクトに参加している建築 家、デザイナー、芸術家の目的は人間中心の質の高いヘルスケア環境を作ることである。芸術作品は、環境の質に貢献する一要素である。このリサーチでは、病 院芸術の実際の証明に基づいた評価法の確立を目指している。ユーザーの入念な査定に基づく。

ピーター・シャー著「エクセター評価――ミレニアムの病院デザインと芸術の基礎」参照。
> Peter Scher, “The Exeter Evaluation-A Basis for Hospital Design and Art in the Millenium”
In Alan Dilani, ed. Design and Health: The Therapeutic Benefits of Design (2nd International Conference on Design and Health 2000) Stockholm: Svensk Byggtjanst, 2001) pp. 317-327

チャールズ・ケイ、トニー・ブリー
『ヘルスケアの芸術:可能性のパレット』

Charles Kaye and Tony Blee, The Arts in Health Care: A Palette of Possibilities
London: Jessica Kingsley Publishers, 1977

出版されて数年になるが、本書にはヘルスケアの場での芸術活用の第一歩が紹介されている。ヘルスケアに直接携わる 人々に、それぞれの施設で芸術プログラムを立ち上げるための実用的なアプローチ法を提案するのが本書のねらいである。いわゆる芸術セラピーではなく、芸術 の癒し効果に焦点を当てる。29人の寄稿者がヘルスケアの場の芸術導入のあらゆる局面(プログラムの立ち上げ方、地域社会との連携、高齢者や精神障害者等異なる立場の集団が会している際の指導法、諸外国の見解、ケアの質、評価法等)について論じる。(以下の2項目参照)

マルコム・マイルズ、「芸術で癒されるのか?ヘルスケア芸術の評価アプローチ」
Malcolm Miles, “Does Art Heal? An Evaluation Approach to Art in the Health Service.”
In Charles Kaye and Tony Blee, editors.  The Arts in Health Care: A Palette of Possibilities (London: Jessica Kingsley Publishers, 1977), pp.241-249

ロビン・フィリップ、「ヘルスケアにおける芸術の効果を評価する」
Robin Philipp, “Evaluating the effectiveness of the Arts in Health Care.”
In Charles Kaye and Tony Blee, editors.  The Arts in Health Care: A Palette of Possibilities (London: Jessica Kingsley Publishers, 1977), pp.250-261

ジーン・D・コーエン
『なぜあの人はかくも元気なのか?新しい生き方を見つける10の扉』
真野明裕(訳)東京:光文社、2001

Gene D. Cohen, The Creative Age: Awakening Human Potential in the Second Half of Life
New York: Avon Books, 2000

加齢の重要な局面のひとつとして、本書は神経科学の最新の発見に触れている。人間の脳は、刺激を受け続けていれば 可塑性(異なった環境条件に適応できる生物の能力)を一生維持できるということが発見されたのだ。言い換えれば、脳の機能を維持するためには刺激が必要な のである。創造性を持つ、つまり新しいことを学びたいという意欲を持ち、新しいことに挑戦することが大事である。

ロナルド・コツラク
『脳の中:精神の働きの画期的な発見』

Ronald Kotulak,
Inside the Brain: Revolutionary Discoveries of How the Mind Works
Kansas City: Andrews McMell Publishing, 1966

特に第15、13、12章参照。また150ページの脳の「可塑性」の項も参照。

ウィリアム・クリーブランド
『様々な場での芸術――アメリカの地域社会や社会福祉施設で活躍する芸術家達』

William Cleveland,
Art in Other Places: Artists at Work in America’s Community and Social Institutions
Westport, Connecticut: Praeger Publishers. 1992

26章からなり、老人ホームや刑務所、精神障害者施設、病院で、また、高齢者や障害者、問題行動のリスクの高い若者に芸術がどのような役割を果たすかを紹介する。

スーザン・サンデル、デビッド・リード・ジョンソン
『門で待ちながら:老人ホームにおける創造性と希望』

Susan Sandel & David Read Johnson,
Waiting at the Gate: Creativity and Hope in the Nursing Home
New York/ London: The Haworth Press, 1987.
(Also Published as Activities, Adaption & Aging, Volume 9, Number 3, Spring 1987)

「門」という語は、生と死の境界を示す比喩として用いられている。12章からなり、現在と過去の架け橋として、また受動的な生活から活動的な生活へ、沈黙から自分の思いを表現することへと変わっていくために、老人ホームの入居者達を芸術がいかに助けているかを紹介する。

フローレンス・ナイチンゲール
『看護について――何が看護で、何が看護でないか』

Florence Nightingale, Notes on Nursing: What it is and what it is not.
New York: Dover Publications, 1969

初版の発行は19世紀中頃であるが、ナイチンゲールの『看護につい て』は今日でも興味深い本である。なぜなら、ここに書かれた患者にとって最も必要なことは、 今もナイチンゲール女史の時代と変わらないからである。美の大切さ、芸術の役割、快適な環境の大切さ――この3点を始め、さまざまなことが論じられている。

ロジャー・ウルリッチ(テキサスA&M大学ヘルスシステムとデザインセンター指導主任)は建物のデザインやインテリアデザイン、自然、芸術と健康との関係について精力的に論文を発表している。 「窓からの眺めは術後の回復に影響を与えるかもしれない」という論文 ( “View Through a Window May Influence Recovery from Surgery” Science, Vol. 224, April 1984, pp. 420-421) では、ヘルスケア施設デザインの画期的なアプローチが論じられている。氏の論文の参考文献一覧で、氏が執筆したさまざまな記事を探すことができる。ここにはそのうちの2点だけ掲げる。

「芸術の癒し効果」

Ulrich, Roger, “The Effects of Viewing Art on Medical Outcomes”
In Culture, Health and the Arts – an Anthology
The Manchester Metropolitan University, 2000. pp. 51-53

「ヘルスケア環境デザインの癒し効果」

Ulrich, Roger, “Effects of Healthcare Environmental Design on Medical Outcomes.”
In Alan Dilani, ed. Design and Health: The Therapeutic Benefits of Design
(2nd International Conference on Design and Health 2000) (Stockholm: Svensk Byggtjanst, 2001) pp. 49-59.

さまざまな論文

AM・ドーソン、WR・ボーラー
「創造的な活動と高齢者の健康」

Dawson AM, Baller WR. “Relationship between creative activity and the halth of lderly persons.”
J Psychol . 1972 Sep; 82 (1st Half): 49-58.

リー・ドリック=ヘンリー
「陶芸で高齢者施設の入居者に芸術セラピーを」

Doric-Henry, Lee
“Pottery as Art Therapy with Elderly Nursing Home Residents. Art Therapy”
Journal of the American Art Therapy Association; v14 n3 p163-71 1997.

デフォリア・レイン
「入院患者の免疫機能に対する音楽セラピーの効果」

Lane, Deforia,
“Effects of Music Therapy on Immune Function of Hospitalized Patients”
Quality of Life, Vol. 3, No. 4 (year), pp. 74-80.

アーナ・キャプロウ・リンダー
「高齢者へのセラピーとしてのダンス」

Linder, Erna Caplow, “Dance as a Therapeutic Intervention for the Elderly”
Educational Gerontology 8(2) 1982 (Special Issue: Gerontology and the Arts) pp.167-174.

ロジャー・S・ウルリッチ
「庭の癒し効果:理論と研究」

Ulrich, Roger S.
“Effects of Gardens on Health Outcomes: Theory and Research.”
In Marcus, Clare Cooper and Barnes, Marni, ed., Healing Gardens: Therapeutic Benefits and Design Recommendations
(New York: John Wiley & Sons, Inc., 1999), pp. 27-86

BM・ウィクストロム、T・セオレル、S・サンドストロム
「高齢者に絵画作品で刺激を与えることの精神生理学的効果」

Wilkstrom BM, Theorell T, Sandstrom S.
“Pshychophysiological effects of stimulation with pictures of works of art in old age.”
In Psychosom. 1992; 39 (1-4): 68-75

BM・ウィクストロム、T・セオレル、S・サンドストロム(1993)
「高齢者への芸術刺激の健康と感情面の効果」

Wilkstrom BM, Theorell T, Sandstrom S.
Psychotherapy and Psychosomatics, 60, 195-206

芸術と加齢に関する論文のオンライン版

オンライン興味ある記事|Online Articles of Interest 参照



[1] After Staffan Josephsson, “Narrative Thinking,” pp. 21-23; in Everyday Activities as Meeting Places in Dementia (Stockholm: Norstedts Trycheri AB, 1994).

[2] See the following references:

Norman Cousins,
Anatomy of an Illness as Perceived by the Patient: Reflections on Healing and Regneration
New York: W.W. Norton & Company,  2001

Patch Adams, et al,
Gesundheit!: Bringing Good Health to You, the MedicalSystem, and Society Through Physician Service, Complementary Therapies, Humor, and Joy  
Inner Traditions Intl. Ltd; Revised edition, 1998.

[3] David B.Morris,
Illness and Culture in the Postmodern Age (Berkeley, University of California Press, 1998);
see the section on the chicken and snow shovel experiment, pp. 252-254. 

[4] Gene Cohen,
The Creative Age: Awakening Human Potential in the Second Half of Life
(New York: Avon Books, 2000).

[5] URL: http://arts.endow.gov/endownews03/AIHRelease.html.

[6] For details, see the four articles by Professor Bygren, et al, under “Selected References.”


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